
失敗しない競泳水着のサイズ選び|きつい・苦しいを解消する計測の極意とブランド別攻略法

「競泳水着を買ってみたけれど、きつすぎて入らない…」「サイズ表通りに買ったのに、泳ぐと水が入ってくる」といった悩みを抱えていませんか?
実は、競泳水着のサイズ選びは、一般的なアパレルやレジャー用水着の基準とは「真逆」の考え方が必要になる非常にデリケートな作業です。
競泳水着は単なるウェアではなく、水との摩擦を減らし、筋肉の振動を抑えてパフォーマンスを最大化するための「精密なギア」だからです。
- なぜ競泳水着は「きつめ」が正解なのかという理論的根拠
- 失敗しないための「ヒップ・バスト・トルソー」の正確な測り方
- レベル別(初心者・マスターズ・選手)に最適なサイズ感の基準
- 主要ブランド(ミズノ・アリーナ・スピード)のサイズ特性の違い
この記事では、数多くのトップスイマーをサポートしてきたフィッティングの知見をもとに、初心者から上級者まで納得できる「究極のサイズ選び」を解説します。
正しいサイズを選ぶことで、泳ぎの抵抗が劇的に減り、自己ベスト更新への大きな一歩を踏み出すことができるようになるでしょう。
結論から言えば、「陸上で少し苦しいと感じ、水中でのフィット感が最大になるサイズ」こそが、あなたのパフォーマンスを最も引き出す1着です。
競泳水着のサイズ選びが「一般の水着」と根本的に異なる理由
競泳水着を初めて手にした方が最も驚くのは、その「小ささ」と「生地の硬さ」です。普段の服がMサイズだからとMを選んでも、足さえ通らないことも珍しくありません。
これは、競泳水着が「着心地」よりも「水中の推進効率」を最優先して設計されているためであり、この設計思想を理解することがサイズ選びの第一歩となります。
ここでは、なぜ競泳水着がこれほどまでにタイトに作られているのか、その科学的・構造的な理由を深掘りしていきます。
水抵抗を極限まで減らすための「コンプレッション」の正体
競泳水着の最大の目的は、人間の身体をより「滑らかな魚の形」に近づけることにあります。強力なコンプレッション(着圧)こそが、タイムを縮める鍵となります。
人間の体表面には凹凸があり、泳いでいる最中に筋肉が細かく振動することで大きな水抵抗(形状抵抗)が発生してしまいます。
水着で身体を強く締め付けることで、筋肉の無駄な揺れを抑え、体表面をフラットに整える。これが競泳水着におけるサイズ選びの核心です。
あるマスターズスイマーのAさんは、初めての大会で「苦しくないように」とワンサイズ大きめの水着を選びました。しかし、いざ飛び込んでみると、胸元から大量の水が入り込みました。
水着と身体の間に隙間ができると、そこが「水袋」のようになり、まるで重りを引きずって泳いでいるような状態になってしまったのです。
結局、Aさんは本来の力を出し切れず、練習よりも遅いタイムでフィニッシュすることになりました。この経験から、彼女は「きつさ」の重要性を痛感したのです。
- 着用時に太ももやウエストに「隙間」が一切ないか確認する
- 生地を引っ張ったときに、1cm以上浮かない程度の密着度を目指す
- 「苦しい」と感じるのが、生地の締め付けによるものか、呼吸の妨げかを見極める
専門的な視点で見ると、コンプレッションは単なる締め付けではなく、「静脈還流」を助け、疲労物質の蓄積を抑える効果も期待されています。
競泳水着のフィッティングにおいて、「余裕がある」ということは「抵抗を生む余地がある」と同義です。トップ選手は、陸上では一人で着るのが困難なほど小さなサイズを選び、水中での水流を味方につけます。
緩い水着が招く「水溜まり」とタイムへの悪影響
「少し緩めの方が動きやすい」という考えは、競泳においては命取りになります。水着の中に水が入り込む「ポケット現象」は、想像を絶する抵抗を生み出します。
水は空気の約800倍の密度を持っています。わずか数ミリの隙間から入り込んだ水が水着の中で滞留するだけで、フォームは崩れ、推進力は大幅に減退します。
特にターン後や壁を蹴った直後の最高速域において、緩い水着はブレーキとして機能してしまい、せっかくの加速を台無しにしてしまうのです。
| 状態 | 発生する問題 | パフォーマンスへの影響 |
|---|---|---|
| 適切なサイズ | 着脱に時間はかかるが、肌と一体化する | 水の抵抗を最小化し、浮力が得やすくなる |
| 緩すぎるサイズ | 腰や胸元に水が溜まり、生地が波打つ | 形状抵抗が増大し、100mで数秒のロスが生じる |
もしあなたが「今持っている水着の腰の部分が浮いている」と感じるなら、それは既にサイズオーバーのサインです。
アクションプラン:フィット感のセルフチェック
水に入った状態で、水着のストラップやウエスト部分を軽く引っ張ってみてください。もし簡単に指が入り、水がドバッと入れ替わる感覚があれば、次の買い替えでは必ず1サイズ下げて検討しましょう。
伸縮性の違いを知る(ニット素材vs布帛素材)
サイズ感に最も大きな影響を与えるのが「素材」の種類です。競泳水着には大きく分けて「ニット素材」と「布帛(ふはく)素材」の2種類が存在します。
「いつもMサイズだから」という理由で布帛素材のMを買うと、全く着られないというトラブルが多発します。
ニット素材は編み物で伸縮性が高いですが、布帛素材は織物であり、ほとんど伸びません。この素材の特性を理解せずにサイズを選ぶことは、フィッティングの失敗に直結します。
高校から水泳部に入部したB君は、憧れのトップ選手と同じ「布帛素材」のレース用水着を、練習用と同じサイズで購入しました。
ところが、試合当日に着用しようとしたところ、膝から上に全く上がりません。無理に引っ張った結果、高価な水着の股の部分が「バリッ」という音と共に破れてしまいました。
布帛水着は伸びない分、サイズ選びに1mmの妥協も許されません。B君は、素材によってサイズ選びのルールが変わることを身をもって学んだのです。
- まずは現在検討中の水着が「ニット(練習用・初級レース用)」か「布帛(上級レース用)」かを確認する。
- 布帛素材の場合は、メーカー公表のサイズ表を1cm単位で厳密に照らし合わせる。
- 布帛素材は「履くのに15分かかる」のが正常であることを理解し、焦って大きいサイズを選ばない。
専門家のアドバイス
布帛素材は高い着圧を実現しますが、その分、骨格との相性が顕著に出ます。特にヒップ周りががっしりしているタイプの方は、布帛素材の場合のみ、ヒップサイズを優先して1サイズ上げる判断が必要になることもあります。
【部位別】失敗しないための正確なサイズ計測・フィッティング術
自分に合うサイズを知るためには、自分の身体を「正しく知る」ことから始まります。多くの人が自分のサイズを思い込みで判断していますが、これは非常に危険です。
競泳水着における計測は、一般的な洋服の採寸よりもタイトに、かつ正確な位置で行う必要があります。わずか2cmの計測ミスが、水着選びの致命的な失敗を招くからです。
ここでは、メーカーのサイズ表を最大限に活用するための、プロ仕様の計測テクニックを解説します。
メーカーが最も重視する「ヒップ」と「バスト」の測定位置
競泳水着のサイズ表で最も重要な項目は「ヒップ」です。意外かもしれませんが、身長よりもヒップサイズが優先されることが多々あります。
水着のずり落ちを防ぎ、しっかりと固定する起点となるのが骨盤周りだからです。ヒップの計測は「最も太い部分」を水平に測ることが絶対条件です。
女性の場合はバストサイズも重要ですが、競泳用は潰して平らにすることを前提としているため、バストトップの数値だけでなくアンダーとのバランスも考慮します。
- ヒップ計測:足を揃えて立ち、お尻の最も突き出している部分を通るようにメジャーを一周させます。このとき、メジャーが地面と水平であることを鏡で確認してください。
- ウエスト計測:おへその少し上、最も細い部分を測ります。競泳水着はここが締まっていることで水の流入を防ぎます。
- バスト計測(女性):ブラジャーを外した状態、または薄手のスポーツブラの状態で、胸の最も高い位置を測ります。
ある選手は、ヒップがLサイズ相当、ウエストがMサイズ相当という体型でした。彼は「ウエストが緩いと水が入る」と考えMを選びましたが、ヒップがきつすぎて泳いでいる最中に足が痺れてしまいました。
競泳水着において「入らない」ことは最大のリスクです。迷った場合は大きい方の部位(この場合はヒップ)に合わせるのが基本戦略となります。
身長よりも「胴囲(トルソー)」が優先されるケースとは?
あまり知られていませんが、競泳水着のフィット感を左右する裏の主役が「トルソー(胴囲)」です。
トルソーとは、肩から股の間を通り、再び同じ肩に戻る一周の長さのことです。特にワンピースタイプの女性用水着や、ジュニア選手においてトルソーは決定的な指標となります。
身長が低くてもトルソーが長い(座高が高い)体型の場合、身長に合わせてサイズを選ぶと、肩に食い込んで痛みが出たり、股の部分が引きつれて泳ぎにくくなったりします。
トルソーの測り方アドバイス
首の付け根(肩のライン)から、股の下を通り、背中を回って元の位置に戻るループを測ります。一人で測るのは難しいため、誰かに手伝ってもらうのがベストです。この数値がメーカー推奨値を超えている場合、1サイズアップを強く推奨します。
「身長は160cmなのにLサイズを使っている」という選手は少なくありません。その多くはトルソーが長く、Mサイズでは肩を動かす可動域が制限されてしまうためです。無理な引きつれは、ストロークの質を下げてしまいます。
サイズ表の「境界線」にいる時の正しい判断基準
例えば、Mサイズの基準がヒップ89〜93cm、Lサイズが92〜96cmだったとします。自分の数値が「92.5cm」だった場合、どちらを選ぶべきでしょうか。
この「境界線」での判断が、満足度を大きく左右します。結論から言えば、その水着の「用途」で決めるべきです。
練習用であれば、長時間の着用でも血流を妨げない「Lサイズ」を。ここ一番のレース用であれば、水流抵抗を排除する「Mサイズ」を選ぶのがスイマーの鉄則です。
| 判断軸 | 小さい方(下のサイズ)を選ぶべきケース | 大きい方(上のサイズ)を選ぶべきケース |
|---|---|---|
| 目的 | 50m〜100mの短距離レース | 長距離レース・長時間の練習 |
| 素材 | 伸縮性のあるニット素材 | 全く伸びない高機能布帛素材 |
| 好み | 締め付けがないと不安になる | 締め付けすぎると息苦しさを感じる |
「迷ったら小さい方」という格言が水泳界にはありますが、それはあくまで「着られること」が前提です。もし自分の体脂肪率が低く、筋肉質なタイプであれば、生地の伸びがさらに悪くなるため、無理をせず上のサイズを選ぶのが賢明な判断です。
【レベル・目的別】選ぶべきサイズ感の黄金比
競泳水着は、泳ぐ人のレベルや目的によって「正解」が変わります。オリンピック選手と同じサイズ感で初心者が泳ぐのは、苦痛でしかありません。
逆に、レースで勝ちたい人がフィットネス感覚のサイズを選んでいては、いつまでもベストタイムは更新できません。
ここでは、あなたの現在のフェーズに合わせた「最適なサイズ感の黄金比」を具体的に提示します。
初心者・マスターズ向け「快適性と推進力のバランス」
初めて競泳水着を買う方や、健康維持のためにマスターズ大会に参加する方は、「きつすぎる」ことによるストレスを避けるべきです。
目安は「陸上で着用した時に、深呼吸がスムーズにできること」です。
あまりにきつい水着は、泳ぐ楽しさを損なうだけでなく、心拍数が上がりやすくなる原因にもなります。ニット素材のモデルを中心に、適度なホールド感があるものを選びましょう。
フィットネスからマスターズに転向したCさんは、最初に買った本格競泳水着の締め付けに驚き、「自分には無理だ」と諦めかけました。
しかし、アドバイスを受けて「1サイズ上のニット素材モデル」に変えたところ、程よいサポート感で体が浮きやすくなり、泳ぐのが劇的に楽になったと言います。
初心者は「段階的に」きつさに慣れていくことが、継続のコツです。まずはメーカー標準サイズで「ジャスト」を狙いましょう。
- 肩紐が食い込んで赤くなっていないか
- 股関節の可動域が十分に確保されているか
- 1時間連続で着用しても、肌に強い跡が残らないか
上級者・レース向け「100分の1秒を削る超密着フィッティング」
コンマ数秒を争うシリアススイマーにとって、水着は「第二の皮膚」でなければなりません。
理想のサイズ感は、着用に5分〜10分かかり、着終えた後に全身が「カチッ」と固められるような感覚です。
このレベルでは、布帛素材をメインに、あえて標準サイズより1サイズ下を攻める「タイト・フィッティング」が一般的です。それによって得られる圧倒的な低抵抗は、何物にも代えがたい武器になります。
上級者へのアクションプラン
レース用(布帛)を選ぶ際は、必ず「ヒップサイズ」を最優先してください。ウエストに少し隙間ができても、ドローコード(紐)で調整可能です。しかし、ヒップや太ももに隙間があると、そこから水が入り込み、レース中の水着の「ズレ」に繋がります。
練習用水着(タフスーツ等)で重視すべき耐久性とゆとり
毎日の練習で使う水着は、レース用とは全く別の視点でサイズを選ぶ必要があります。
練習用水着(アリーナのタフスーツやミズノのエクサースーツ等)は、耐塩素性に優れた素材を使用していますが、その分、ポリウレタンを含まないため伸縮性が低いのが特徴です。
練習用は、レース用よりも「ハーフサイズから1サイズ上」の感覚で選ぶのが、長持ちさせる秘訣です。
練習用水着は、何度も着脱を繰り返します。あまりにきついサイズを毎日使うと、生地や縫い目への負担が大きく、すぐに伸びてしまったり、破れたりする原因になります。
「練習ではあえて水の抵抗を受けるために、少し緩めを着る」というストイックな選手もいるほどです。基本は、長時間の練習でも集中力が切れない「適度なホールド感」を重視しましょう。
FINA承認(World Aquatics承認)モデルの特殊なサイズ特性
大会に出場するために必須となる「FINA承認ラベル」付きの水着は、その形状や素材に厳しいルールがあります。
これらのモデルは、一般の水着よりも「カッティング(切り込み)」が鋭く、身体をよりコンパクトに包み込むように設計されています。
特にトップモデルは、特定の泳法(平泳ぎ用、自由形用など)に合わせてサイズ設計が微調整されていることがあります。
平泳ぎ向けのモデルは、キック時の股関節の開きを邪魔しないよう、足回りの設計に余裕を持たせつつ、腰回りを固めています。自分の専門種目と、水着のコンセプト、そしてサイズ感を三位一体で考えるのがプロの選び方です。
まとめ:目的別サイズ選びの基準
・練習用:快適性 7:ホールド感 3
・初級レース用:快適性 4:ホールド感 6
・上級レース用:快適性 1:ホールド感 9
ここまでで、サイズ選びの基礎から目的別の判断基準までを解説しました。次のセクションでは、実際に購入する際に避けては通れない「ブランドごとのサイズ特性」や、失敗した時のリカバリー方法について詳しく見ていきましょう。
主要4大ブランド別・サイズ感と形状の徹底比較
競泳水着のサイズ選びをさらに難しくしているのが、メーカーごとの「サイズ感のクセ」です。JIS規格に基づいたサイズ表記(S/M/Lなど)は共通でも、実際の着用感は驚くほど異なります。
同じMサイズでも、「A社はヒップがタイトだが、B社は太もも周りにゆとりがある」といった設計思想の違いが、フィッティングの成否を分けるのです。
ここでは、日本の競泳市場を支える主要4大ブランドについて、エディターが実際に着用し、多くのスイマーからヒアリングした「生の声」に基づいたサイズ特性を解剖します。
MIZUNO(ミズノ)|日本人の体型に最適化された設計
ミズノの最大の特徴は、日本メーカーならではの「日本人の骨格に最も馴染むカッティング」にあります。他ブランドに比べて、ヒップの収まりが良く、着用時の安心感が群を抜いています。
特にフラッグシップモデルの「GX・SONIC」シリーズは、骨盤をサポートしてフラットな姿勢を保つ機能に長けていますが、その分、ウエストの締め付けは非常に強力です。
ミズノは「標準的な日本人体型」を基準にしているため、海外ブランドで「股ぐりが合わない」と感じる方にとって、最も失敗の少ない選択肢となります。
ある国体選手のDさんは、長年海外ブランドを愛用していましたが、どうしてもターン後の「腰の浮き」に悩んでいました。体型的にヒップが平らなため、海外基準のカットだと余りが出ていたのです。
コーチの勧めでミズノの最新モデルに変更したところ、まるでオーダーメイドのように腰回りが密着。水の侵入がゼロになり、バサロキックの推進力が目に見えて向上しました。
「自分の身体がどこの国の基準に近いか」を知ることは、ブランド選びの重要な指標になります。
- 標準体型〜がっしり体型まで幅広くカバー
- ヒップのホールドを重視するなら、サイズ表通りの選択でOK
- 「GX」シリーズは伸びが極めて少ないため、境界線なら上のサイズを検討
ミズノの水着は、特に大腿部の筋肉の揺れを抑える力が強い。筋肉量が多いパワータイプの選手は、太ももの太さを基準にサイズを選ぶと、本来のパフォーマンスを発揮しやすくなります。
arena(アリーナ)|独自のカットとホールド感の強み
アリーナは、フランス発祥ながら日本での展開が非常に長く、独自の進化を遂げてきました。「アクアフォース」シリーズに代表される、高い撥水性と「締め付けの強さ」が特徴です。
アリーナのサイズ感は、ミズノに比べると全体的に「細身でシャープ」な印象を受けるスイマーが多い傾向にあります。
特に足の付け根(カット)が高めに設計されているモデルが多く、脚の可動域を広く保ちたいスイマーから絶大な支持を得ています。
マスターズ大会の常連であるEさんは、アリーナの水着を愛用していますが、新モデルに買い替えるたびに「一回、練習で履き慣らす」工程を欠かしません。
アリーナの布帛モデルは、新品状態では非常に硬く、身体に馴染むまでにある程度の圧着時間を要するためです。しかし、一度馴染めば、どのブランドよりも強力な浮力を提供してくれます。
「最初は少し無理をしてでも、完璧なフィットを求める」ストイックなスイマーに最適なブランドと言えるでしょう。
アリーナのフィッティング・アドバイス
アリーナは胴回りのカッティングがタイトなため、腹筋が弱いと「苦しさ」を感じやすい側面があります。もしウエスト周りに不安がある場合は、無理に下げず、カタログスペックに忠実に選ぶのが正解です。
Speedo(スピード)|世界標準の着圧とグローバルサイズ
世界シェアNo.1のスピードは、最新の流体力学を駆使した「Fastskin」シリーズで有名です。サイズ感は「グローバルサイズ」を意識しており、他社より若干ゆとりを感じる場合があります。
しかし、これは単に緩いのではなく、水着全体で均一に圧をかける「インテリジェント・コンプレッション」という思想に基づいています。
特定の部位を強く締めるのではなく、身体全体を包み込んで形を整える感覚は、長距離スイマーや、部分的な痛みを嫌う選手に好まれます。
| 項目 | Speedoの特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 全体的なフィット感 | 均一でしなやかな着圧 | ガチガチのホールド感を好む人には物足りないことも |
| サイズ表記 | 数字表記(22, 24, 26等)が多い | SML表記との対応表を必ず確認すること |
| おすすめ層 | 長距離、個人メドレー選手 | 布帛でも比較的着脱しやすいため、初めての布帛に最適 |
専門家の視点
Speedoは胸元や背中のカッティングが深く、肩甲骨の動きを妨げない設計が秀逸です。バタフライや背泳ぎなど、肩を大きく回す種目の選手は、Speedoのサイズ感がしっくりくることが多いはずです。
ASICS(アシックス)|独自のサポートラインと姿勢制御
アシックスの競泳水着は、スポーツ工学に基づいた「姿勢サポート」が最大の特徴です。水着の裏面に配置された補強パーツによって、強制的に「腰高の姿勢」を作らせる設計です。
そのため、サイズ選びを間違えて緩いものを選んでしまうと、このサポートパーツの位置がズレてしまい、機能が100%発揮されません。
アシックスは「身体を固める」という意識が最も強いため、計測数値に妥協せず、ジャストサイズを追い求める必要があります。
- 自分の種目が「姿勢の崩れ」が激しい種目(特に後半の自由形など)か確認する。
- アシックス独自のサイズ表(特に身長とヒップのクロスチェック)を確認。
- 補強ラインが自分の骨盤の位置に正しく当たるか、試着や口コミで確認する。
ジュニアスイマー特有のサイズ選びと保護者が知るべき注意点
お子様の競泳水着選びにおいて、保護者の方が最も悩まれるのが「成長期のサイズアップ」との兼ね合いです。一般の服であれば「少し大きめ」を買うのが定石ですが、競泳水着ではこれが通用しません。
ジュニア期は筋肉の発達も未熟なため、サイズが合わない水着は泳ぎのフォームを崩す直接的な原因になってしまいます。
ここでは、子供の成長をサポートしつつ、競技パフォーマンスを落とさないための「ジュニア専用・サイズ選びの鉄則」を解説します。
成長期を見越した「大きめ」購入がNGな理由
「来年も着られるように」とワンサイズ上の水着を与えることは、子供にとってメリットが一つもありません。ジュニア選手の皮膚は柔らかいため、緩い水着は想像以上に「水」を拾ってしまいます。
水が入って重くなった水着を必死に引きずって泳ぐことは、子供の肩や腰に過度な負担をかけ、最悪の場合、怪我(スポーツ障害)に繋がる恐れもあります。
また、緩い水着は泳ぐたびにズレるため、子供がそれを気にして泳ぎに集中できなくなるというメンタル面でのデメリットも無視できません。
小学5年生のF君は、お母さんが良かれと思って買った「少しゆとりのあるLサイズ(ジュニア)」で大会に出場しました。
飛び込みの衝撃で水着の中に一気に水が入り、お尻の部分が膨らんでしまいました。結局、F君はベストタイムから3秒も遅れ、悔しさで涙を流しました。
それ以来、お母さんは「ジャストサイズが結局一番安上がり(ベストが出る)」と考え、半年ごとに正確な計測を行うようになりました。
- 3ヶ月に一度は身長・体重・ヒップを計測し直す
- 水着の生地が薄くなっていないか(透け)の確認と同時にサイズ感も見る
- 「肩が痛い」と言い出したら、即座にトルソーの長さを測る
子供が「きつい」と訴えた時のチェックポイント
子供は感覚が過敏なため、適切なサイズであっても「きつすぎて苦しい」と訴えることがよくあります。それが「不快感」なのか、それとも「サイズ不適合」なのかを親が見極める必要があります。
競泳水着の締め付けは、慣れるまでは誰でも苦しいものです。まずは「水の中に入れば少し楽になるよ」と伝え、実際にプールで泳がせてみることが大切です。
ただし、特定の部位(脇の下や股の付け根)に食い込んで、皮膚が赤くなっていたり、擦れて痛みが出ている場合は、明らかにサイズが小さすぎます。
親ができるフィッティング確認
子供が水着を着た状態で、背中に指を滑らせてみてください。全く指が入らないほどパツパツで、子供が顔を赤くして息を止めているようなら、それは過度な締め付けです。逆に、簡単に生地が10cm以上伸びるようなら、明らかに大きすぎます。
学校授業(スクール)用と競技用のサイズ基準の違い
「スイミングスクールの進級テスト用」と「競技会でのタイム狙い用」では、選ぶべきサイズの基準を分けるのが賢明です。
スクール用は、週に何度も使い、着脱も自分で行う必要があるため、着やすさを重視した「標準サイズ」を。
一方で、大会用(レース水着)は、タイムを出すためのギアとして割り切り、基準値ギリギリの「タイトサイズ」を選ぶのが、ジュニア選手が上のステップへ進むための第一歩です。
| 用途 | 優先すべきこと | サイズ選びの目安 |
|---|---|---|
| 学校・スクール | 耐久性・自力での着脱 | JIS規格サイズ通り、または+1cm程度の余裕 |
| 大会・競技 | 低抵抗・姿勢サポート | JIS規格サイズの範囲内で、最も小さい数値に合わせる |
ジュニア期に「自分に合ったサイズ感」を肌で覚えることは、将来高いレベルで競技を続ける際、道具を使いこなす感覚を養うことに繋がります。安易に大きめを与えず、今の身体に最適な1枚を選んであげてください。
ブランドごとの特性とジュニア世代の注意点までを網羅しました。いよいよ次は、記事の締めくくりとなる「サイズ間違いを防ぐ試着と着脱のプロ技」について詳しく解説します。
サイズ間違いを防ぐ「試着」と「着脱」のプロ技
自分にぴったりのサイズを選んだとしても、最後に立ちはだかる壁が「着用」そのものです。競泳水着、特にトップモデルの布帛水着は、正しい手順で着なければその性能を発揮できません。
それどころか、無理な力を加えることで、一度も使わないまま数万円する水着を破いてしまう悲劇も後を絶ちません。「正しいサイズを正しく着る」ことまでが、サイズ選びの完結編です。
ここでは、サイズミスを未然に防ぎ、水着の寿命を延ばすためのプロ仕様の着脱テクニックを徹底解説します。
爪を立てるのは厳禁!布帛水着を破かないための必須アイテム
競泳水着の生地は、水の抵抗を減らすために極限まで薄く、かつ高密度に織られています。そのため、指先や爪のわずかな引っ掛かりが致命的な破れを招きます。
特にサイズを攻めている場合、生地を強く引っ張り上げる必要がありますが、絶対に「指の腹」を使い、爪を立ててはいけません。
プロの現場では、着用時の摩擦を減らし、生地へのダメージを最小限に抑えるための「三種の神器」を活用するのが常識となっています。
| アイテム | 役割・メリット | 使い方 |
|---|---|---|
| フィッティンググローブ | 爪による破れを100%防止し、滑りを良くする | 両手に着用し、指の腹全体で生地を押し上げる |
| ビニール袋 | 足首やヒップの通過を劇的にスムーズにする | 足先に被せて水着を通し、後から引き抜く |
| 専用スムーサー(滑り粉) | 肌と生地の摩擦をゼロに近づける | 汗ばみやすい部分に薄く塗布する |
あるインターハイ常連の選手は、大切な予選の直前、グローブを忘れて素手で水着を着用しようとしました。焦りから指先に力が入り、新品の水着の腰部分に穴を開けてしまったのです。
幸い、予備の水着を持っていましたが、精神的な動揺からレース結果は散々なものでした。この事例は、道具を正しく使う準備もまた、サイズ選びの一環であることを示しています。
「サイズが小さいから入らない」のではなく、「滑りが悪いから入らない」ケースが多々あることを覚えておきましょう。
布帛水着を初めて履く際は、乾燥した清潔な肌状態で、かつ涼しい場所で着ることを強く推奨します。湿気や汗は生地の摩擦を増大させ、本来適正なサイズであっても「小さすぎる」という誤認を生む原因になります。
着るのに20分?トップモデルの「正解のきつさ」を知る
初めてトップモデルの布帛水着を着用する方は、その「時間の長さ」に不安を覚えるかもしれません。しかし、「着用に15分〜20分かかる」のは、サイズが合っている証拠でもあります。
もし、スルスルと1分足らずで着られてしまうようなら、それはレース用としてはサイズが大きすぎる可能性が高いです。
正解のきつさとは、着用後に「第二の皮膚」のように全身がコーティングされ、筋肉の無駄な動きが完全に封じ込められている感覚を指します。
- 足首・膝まで:ビニール袋を使って、かかとを通過させます。膝の位置を水着の膝ラインに正確に合わせます。
- 太ももの引き上げ:一気に上げず、数センチずつ、皮膚と生地を馴染ませながら「指の腹」で押し上げていきます。
- ヒップの通過:ここが最大の難所です。身体を少し捻りながら、骨盤の張り出しを一つずつ超えていくイメージで。
- 最終調整:股の部分に隙間ができないよう、下から上に生地を「余らせず」に送り込みます。
「きつすぎて息が止まりそう」というのは、陸上での感覚です。競泳水着は水の中に入った瞬間に、水圧と生地の馴染みによって絶妙なフィット感へと変化します。
陸上で「少し物足りないかな?」と感じるサイズは、水中では確実に「緩い」と感じるようになります。勇気を持って「限界ギリギリの密着」を受け入れることが、タイム短縮への近道です。
エディターのアドバイス
着用中、もし足の指先に痺れを感じたり、肌が紫色に変わるようなことがあれば、それは明らかにサイズが小さすぎ、血流を阻害しています。その場合は速やかに着用を中止し、サイズ交換を検討してください。
万が一サイズが合わなかった時の調整とリカバリー策
どんなに慎重に選んでも、実際に泳いでみたら「微妙にフィットしない」という事態は起こり得ます。特に試着不可のネット通販では避けて通れないリスクです。
しかし、諦めるのはまだ早いです。わずかなサイズ誤差であれば、いくつかのテクニックでリカバリーすることが可能です。
ここでは、サイズ選びに「少し失敗した」と感じた時の、具体的な対処法を整理しました。
- 「少し大きい」場合:メッシュキャップを水着の腰回りに入れたり、ドローコード(紐)を極限まで締めることで水の流入を抑える。
- 「少しきつい」場合:練習で数回着用し、生地を意図的に少し伸ばす(ニット素材のみ有効)。または、着用前にストレッチをして身体を絞り込む。
- どうしても合わない場合:無理をして泳ぎを崩す前に、チームメイトへの譲渡や中古市場への売却を検討し、適切なサイズを買い直す勇気を持つ。
あるベテランマスターズスイマーは、届いた水着が少し大きかった際、ウエストの紐を一度抜き取り、より強力な非伸縮性の紐に交換しました。
これによって腰回りの密着度を物理的に高め、水の侵入を完全に防ぐことに成功しました。こうした「工夫」も、水泳という競技における道具管理の醍醐味と言えるでしょう。
| 症状 | 原因 | 解決策の優先順位 |
|---|---|---|
| 股に水が入る | ヒップサイズの過大 | 1.紐を締める 2.ワセリンで密着度UP 3.サイズダウン |
| 肩紐が痛い | トルソー寸法の不足 | 1.生地を上に引っ張り上げる 2.1サイズアップ |
| 裾がめくれる | 太もも周りの緩み | 1.シリコンストッパーの確認 2.サイズダウン |
まとめ:正しいサイズ選びがあなたの泳ぎを劇的に変える
競泳水着のサイズ選びは、単なる買い物ではなく、「自分の身体を科学し、パフォーマンスを最適化するプロセス」そのものです。
今回解説した計測術、ブランド特性、そしてレベル別の判断基準を参考にすれば、これまでの「きつくて辛い」という不安は、「タイムを出すための頼もしい相棒」へと変わるはずです。
最後に大切なこと
・サイズ表はあくまで目安。自分の身体の「感覚」を最も信じること。
・ブランドごとに設計思想が違うことを理解し、一つのサイズ表記に固執しないこと。
・「きつさ」は敵ではなく、あなたの推進力を助ける味方であると知ること。
自分にぴったりの1着を身に纏ったとき、水の中での感覚は劇的に軽くなります。水流を切り裂き、自己ベストを更新するその瞬間のために、妥協のないサイズ選びを実践してください。
あなたの水泳人生が、最高のフィッティングによってさらに輝かしいものになることを心から願っています。
